文学フリマに来場された方が、『ロシアズ・ホープ』の邦訳が明治時代に発行されていたことを教えてくださいました。
『世界将来之海王』(内田成道訳、春陽堂、明治29年(1896年)発行)です。
ネットでは、国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで閲覧することができます。
この本も英語版からの翻訳ですが、英語版の内容をそのまま翻訳したのではなく、かなり改変されています。
例を上げると、以下の通りです。
・原著にあった巡洋艦の帆走の記述が削除されている。
・巡洋艦の性能が高く改変されている(速力が16ノット→20ノット、など)。
・原著には記述されていない、日本や他国の巡洋艦の名前が追加されている。
その理由は確認できていませんが、原著発行の1886年から邦訳発行の1896年の間に巡洋艦の性能が向上していたので、物語を1896年の状況に合わせたのではないかと思います。
この本について、お教え下った方に厚く御礼申し上げます。
この本の邦訳が明治時代に発行されていたことを考えると、『ドーキングの戦い』の邦訳も存在していたのではないかと思うのですが(『ロシアズ・ホープ』の英語版の序文では『ドーキングの戦い』に言及していますが、『世界将来之海王』の序文の訳ではその部分が省かれています)、今のところ確認出来ていません。